・日本発達心理学会第13回大会自主企画 2002年3月28日 早稲田大学
「自尊感情研究の新しい展開に向けて −概念的・測定論的検討−」
企画:榎本博明(大阪大学)、松田信樹(大阪大学)
司会:榎本博明(大阪大学)
話題提供者:小林亮(京都光華女子大学)、松田信樹(大阪大学)、田中道弘(常磐大学)
本企画では、自己関連の研究の中でも自尊感情の概念自体を掘り下げた研究や測定論に焦点を当てた研究は比較的少ないため、自尊感情の概念の広がりや測定法の改善の可能性について検討された。小林氏は、日本とヨーロッパの交換留学生における異文化適応過程の差異を参照にしつつ、「開かれた」文化アイデンティティを形成する発達的要因について検討した。松田氏は、社会的アイデンティティ理論の枠組みにおいてなされてきた集合的自尊感情に関する研究をレビューし、現存する集合的自尊感情測度の諸問題を指摘した。田中氏は、自尊感情の代表的測度であるRosenbergの尺度の問題点を、各項目に対する回答理由を分析することを通じて明らかにした。
・日本社会心理学会第43回大会自主企画 2002年11月10日 一橋大学
「自尊感情をめぐって(2)」
企画:林洋一(白百合女子大学)、榎本博明(大阪大学)
司会:林洋一(白百合女子大学)
話題提供者:松田信樹(大阪大学)、田中道弘(常磐大学)、榎本博明(大阪大学)
指定討論者:菅原健介(聖心女子大学)
本企画では、「自尊感情研究の新しい展開に向けて−概念的・測定的検討−」に引き続き、自尊感情の概念的なとらえ方と測定法をめぐる問題点について議論した。松田氏は恐怖管理理論の立場から、そもそも自尊感情とは何なのかという根本的問いについて論じるとともに、現在の自尊感情尺度の問題点についても言及した。田中氏は自尊感情尺度に対する回答理由を向上心という観点から分析することで、従来は自尊感情が低いとされていた被験者の中には、自分自身を肯定的にとらえている者もいることを明らかにした。榎本氏は、面接調査に際して自尊感情尺度を実施した経験に基づき、回答者と話して得られる印象と尺度への回答結果との間に乖離があるのではないかとの疑問を提出した。そして自尊的な項目に非常に肯定的な回答をする者とそれほど肯定的に回答しない者とを分かつものは、必ずしも自尊感情の高低ではなく、他の性格的要因である可能性を示唆した。話題提供に引き続き、話題提供者と菅原氏ならびにフロアとの質疑応答が繰り広げられた。
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